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美髪のご縁で始まった“パレスチナ刺繍帯プロジェクト”
——紛争下にあるパレスチナでは、なかなか自由なものづくりというのは難しいのでしょうか。
山本さん
そうですね。第一次中東戦争が始まる前(1948年以前)と比べると、今は糸の太さが決まった刺繍糸しか入ってこなかったり、針の種類も細いものが手に入りにくい、といった厳しさがあり、モノヅクリの可能性を狭めています。現在は、NGOが紛争地でのモノヅクリ・外国での販売を支援しています。刺繍ポーチなどイベントで販売している一部の小物類は、私がNGOから買い取り、そのほか、帯やストールなどをオリジナル商品としてつくっています。
——手の込んだ帯の刺繍を発注する際には、言語の壁をクリアするのがかなり大変なのでは。
山本さん
パレスチナはアラビア語がメインなので、英語のできるパレスチナ人に通訳に入ってもらっています。パレスチナ刺繍には伝統的なモチーフがあるので、テーブルランナーなどを見本に作りたいものを説明するのは、さほど困難ではないです。刺繍の色みについては日本的なものでお願いすることもあれば、現地の女性の裁量で進めてもらうこともあります。でも、実際に作るのは大変です。刺繍糸の色番や、位置を細かく図面に書いても、全体の2割ほどは注文と違うものが仕上がってきます。あまりに違ったものを仕上げてきた場合は、日本語で勝手に変えてしまった点への怒りを表したほうが早く伝わりますね(笑)
——ただ支援するのではなく、対等な立場でビジネスを成立させたいという想いがあるからこその厳しさですね。
山本さん
紛争が長引いているがゆえ、「じっとしていても支援のお金が入ってくる」という支援慣れのようなムードが現地の人の中に漂っていることもあります。しかし紛争がいつか終わった時のことも見据え、仕事の達成感を得ながら自立していける道を根気よく一緒に目指していくつもりです。パレスチナは、日本と同じくらい物価が高く、外国人向けのカフェは日本よりも高いです。刺繍をしてくれる女性にきちんとした賃金を払い、そこに取り次ぎをしてくださるNGOの人件費がプラスされると、どうしてもプロダクトにつける価格は高めになってしまいます。ビジネスをやっていく大変さはありますが、それでも「パレスチナの人はこんなに美しいものづくりができる」という文化的な価値を届けられたなら“美は善”といいますか、一連のプロセスも美しいものになると思っています。
——uruotteもサステナブルな美しさを大事にしているので、やはりものづくりは関わるひとりひとりを大切にしたい、とつねに思っています。
山本さん
イベントも4回目を迎え、パレスチナだけでなく中東の食材を扱うインポーターさん、シリア難民の女性がつくる雑貨やアクセサリーを扱う団体さんも集ってくれています。中東って大変な地域ではあるけれど、実はカワイイもの、美味しいものが沢山あるという側面を、ひとりでも多くの方にシェアできたら嬉しいです。
▶山本真希さんの運営するパレスチナ刺繍帯プロジェクト
https://www.facebook.com/icej.tatreez/
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Text: Kumiko Ishizuka
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