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前回と今回は連続で「体を温める飲み物」「体を冷やす飲み物」についてご紹介しています。
まずは、前回の復習をしてみましょう。前回は、食べ物に「温熱・寒冷」があるのと同様に、飲み物にも「温熱・寒冷」があること。野菜や果物には旬があり、その季節に必要な食材を自然に口にすることが多い。一方、飲み物は意識しないと一年中同じものになりがち。だからこそ、それぞれの飲み物の性質・効能を知ることが大切、というお話をしました。
今回は「体を温める飲み物」と飲み方のコツをご紹介します。
発酵具合によって温冷の性質が変わる!ウーロン茶
薬膳では一般的にお茶の性質を次のように分類しています。
- 緑茶 やや体を冷やす「涼性」
- ウーロン茶 ニュートラルな「平性」
- プーアル茶・紅茶 体を温める「温性」
これらのお茶は、すべて椿科のCamellia sinensisという植物の葉から作られています。原料が同じなのに、味も香りもかなり違いがありますね。これは主に発酵の度合いによるもの。まったく発酵させていないものが緑茶、半分発酵させたものがウーロン茶、完全発酵したものが紅茶。プーアル茶は後発酵茶に分類されます。半発酵のウーロン茶は、ごく浅い発酵で緑茶に近いものから、東方美人茶のように紅茶に近い感じになるまで発酵を進めたものなど、種類が豊富。茶葉が緑に近いものほど涼性に近く、濃い茶色になるほど温性になります。
緑茶よりもほうじ茶
前回、緑茶に含まれるタンニンやテアニンは、体を冷やすカフェインの働きを抑えるというお話をしましたが、積極的に体を温めるためには、緑茶よりほうじ茶がおすすめです。体を冷やす食材でも、加熱調理によって冷やす性質が緩和されます。同様に、緑茶を長時間加熱して作るほうじ茶は、やや温性をもつようになります。最近の研究で、ほうじ茶独特の香ばしい香りの成分「ピラジン」に、血行を促進する働きがあることがわかりました。アツアツの熱湯を使うのがポイントです。
温熱性のスパイスで体を温める
体を温めるために、ぜひ上手に利用したいのがスパイスです。
「肉桂、小茴香、丁香、小豆蔲、乾姜、胡椒」。これらはすべて、漢方薬にも使われる温熱性のスパイスです。難しそうな漢字が並んでいますね。ではカタカナで書き直してみましょう。
- 肉桂=シナモン
- 小茴香=フェンネル
- 丁香=クローブ
- 小豆蔲=カルダモン
- 乾姜=ドライジンジャー
- 胡椒=コショウ
冷え性対策には薬膳スパイスティーを
いかがですか?どれも、なじみのある一般的なスパイスですよね。でも、なかなか家では使いきれず、どうしても余りがち。そんなときに、ぜひ作って欲しいのが「薬膳スパイスティ―」です。
【薬膳スパイスティ―の作り方】
材料(2杯分)
- 紅茶 小さじ2杯
- 水 400cc
- シナモンスティック 1/4本
- カルダモン(ホール) 2粒
- クローブ 2粒
作り方
- カルダモンは皮ごと押しつぶし、シナモンスティックは荒く割る。
- 小鍋に水とすべてのスパイスを入れ、中火で加熱し、煮立ったら弱火にして3~4分煮出し、うっすらと茶色に色づいたら紅茶葉を入れる
- 火を止め、2分ほど蒸らしたら完成
- 茶こしでこして、カップに注ぎ、お好みでミルクや砂糖を加えましょう
濃厚なミルクティーが好きな方には、牛乳で煮出すマサラチャイがおすすめです。
牛乳がうまく全体をまとめてくれるので、スパイスの量や種類はお好みで自由にアレンジしてみてください。
【マサラチャイの作り方】
材料(2杯分)
- 紅茶 小さじ2杯
- 水 100cc
- 牛乳 300cc
- シナモンスティック 1/4本
- カルダモン(ホール) 2粒
- クローブ 2粒
- 黒コショウ 2粒
- 生姜2片またはドライジンジャー(粉)2~3振り
- はちみつ 適量
作り方
- カルダモン、黒コショウは押しつぶし、シナモンスティックは荒く割る。生の生姜を使う場合はスライスする
- 小鍋に水とすべてのスパイスを入れ、中火で加熱し、煮立ったら弱火にして3~4分煮出し、うっすらと茶色に色づいたら紅茶葉を入れ、さらに1分煮る
- 牛乳を加え、熱くなるまで温める
- 茶こしでこして、カップに注ぎます
マサラチャイは、はちみつや砂糖で甘味を少し加えるのがおすすめです。
まとめ
今回は、体を温めるお茶とスパイスについてご紹介いたしました。
体が冷えて眠れないときには、マサラチャイにラム酒やブランデーをたらして飲むと、気分も体もほっこり温まります。毎日なにげなく飲んでいるお茶は、地道に体調や体質に影響を与えています。冷え性の方はぜひ、体を温めるドリンクで、ゆっくり体質改善をしていってくださいね。
鳴海 美紀 Miki Narumi
国際鍼灸医師・国際薬膳師・健康美容コミュニケーター・養生文化研究家
1997年北京中医薬大学に留学し、国際鍼灸医師、国際薬膳師を取得。さらにタイやスリランカ等アジア諸国の伝統医学を幅広く研究。帰国後は漢方・薬膳セミナー、美容サロンのメニュー作成・技術指導、店舗への薬膳レシピ提供、テレビ番組の企画、健康記事の執筆・監修
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